「そこに行けばどんな夢もかなう」――日曜の夜、『西遊記』のエンディングが流れるたびに胸が熱くなったあの感覚。覚えていますか?
ゴダイゴの名曲『ガンダーラ』は、私たちに“どこかに存在する理想郷”への憧れを植えつけた楽曲でした。
長年「ガンダーラ=インドのどこか」と信じていた人も多いでしょう。しかし地図を広げると、そこに記される国名は意外なものでした。
結論:憧れのガンダーラは、現在のパキスタンにあります。
では、なぜ歌詞では「インド」と歌われたのか?この記事では、音楽文化史研究家の視点から、地図・歴史・制作秘話まで紐解きます。
【地図で特定】ガンダーラはインドではなかった? 意外すぎる現在地
まずは、長年の疑問に答えましょう。「ガンダーラとはどこか?」
答え:パキスタン北西部・ペシャワール周辺。
アフガニスタン国境に近いインダス川流域の盆地地帯に、古代ガンダーラ王国は存在しました。
「え、インドじゃないの?」と驚くのも当然です。現代の国境線ではパキスタン。しかし、歴史を遡ると事情は大きく変わります。
なぜゴダイゴは「インドにある」と歌った? 2つの理由
① 歴史的には「古代インド(天竺)」の一部だった
現代のパキスタンにあたる地域も、古代では仏教文化圏「天竺(インド世界)」に含まれていました。
玄奘(三蔵法師)もガンダーラを訪れ、『大唐西域記』に繁栄を記しています。宗教・文化的には“インド”と表現しても誤りではなかったのです。
② 歌詞には「イメージ」が優先された
英語詞の “In India” の響き、日本人が抱く「仏教=インド」のイメージ、そしてメロディライン。
これらを踏まえ、作詞家が“理想郷としてのインド感”を重視したため、「パキスタン」というリアルな地名は使わなかったと考えられます。
事実よりも歌としての真実(イメージ)を優先した。
これこそプロの表現技術と言えるでしょう。
「愛の国」の現在地。世界遺産タキシラに残る栄華
ガンダーラは現在、治安の都合上、気軽に行ける場所ではありません。しかし、その栄華の跡はしっかり残っています。
代表的なのが、世界遺産「タキシラ」。
- 古代都市の遺跡
- 仏塔(ストゥーパ)
- 僧院跡
- ギリシャ美術の影響を受けた「ガンダーラ仏」
現代の“仏像”に通じる美術様式が生まれたのは、このタキシラからです。
『西遊記』とガンダーラ。三蔵法師は本当にそこへ向かったのか?
ドラマ『西遊記』では三蔵法師が“天竺=インド”を目指す物語が描かれました。
史実の玄奘はガンダーラを訪れています。つまり、ガンダーラは三蔵法師にとって精神的目的地の一つでした。
エンディングで『ガンダーラ』が流れたのは、ドラマの世界観とも史実ともリンクした、非常に象徴的な演出だったと言えるでしょう。
まとめ:場所は特定できても、心の中の「理想郷」は永遠
- ガンダーラは現在のパキスタン北西部にある。
- 歌詞の「インド」は、古代文化圏とイメージを優先した表現。
- タキシラ遺跡に、今もその栄華が刻まれている。
地図上では場所を指し示せても、心の中にある“ユートピア”は誰にも奪えません。
容易に行けないからこそ、『ガンダーラ』は永遠の名曲であり続けるのかもしれません。
今夜はもう一度、あの曲を流してみませんか?
あなたの中の“遥かな愛の国”へ、静かに旅してみてください。


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