「クレームを上手くいなす」「鋭い質問をいなす」など、ビジネスシーンや日常会話で時折耳にする「いなす」という言葉。
なんとなく「かわす」や「受け流す」といったニュアンスで使っている方が多いと思いますが、元々はどこから来た言葉なのでしょうか。
この記事では、「いなす」の正しい意味や漢字表記、相撲・柔道から来たという語源、そしてビジネスで使える例文や言い換え表現を分かりやすく解説します。
1. 「いなす」の正しい意味と漢字表記
「いなす」は、漢字で書くと「往なす」または「去なす」と表記します。
国語辞典における現代の一般的な意味は、以下の通りです。
- 攻撃を簡単にあしらうこと。
- 自分に向けられた追及や鋭い質問などを、言葉巧みにかわすこと。
相手の勢いや強い圧力をまともに受け止めず、スルッと横へ流すようなイメージを持つ言葉です。
2. 語源は相撲や柔道などの「格闘技のテクニック」
この「いなす」という言葉は、元々は日本の伝統的な武道・格闘技の用語から日常語として定着したものです。
相撲における「いなす」
相撲において、突進してくる相手に対して急に体をかわし、相手の体勢を崩す技のことを指します。まともにぶつかり合うのではなく、相手の力を利用して攻撃をそらす高度な技術です。
柔道における「いなす」
柔道においても、相手が想定していない方向へ体を急に動かすことで、相手の攻撃をあしらう重要なテクニックとして使われます。
このように、武道において「相手の物理的な攻撃をかわす」という意味だったものが、現代社会では「言葉による攻撃や追及を適当にあしらう」という意味に転じて当たり前のように使われるようになりました。
3. ビジネスや日常会話での使い方・例文
社会生活において、感情的になって正面からぶつかってくる相手に対し、まともに相手をせずにさらっとかわすような場面でよく使われます。
- 記者からの鋭い質問を軽くいなして、次の話題へ移った。
- 理不尽なクレームに対し、正面から反論せずに上手くいなすスキルが求められる。
- 彼は上司からの嫌味をさらっといなすのが得意だ。
4. 「いなす」のその他の意外な意味
現代では「かわす」という意味が主流ですが、辞書には以下のような少し古い意味や表現も掲載されています。
- 帰らせる、去らせる: 「帰る」を意味する「往ぬ(いぬ)」の派生で、相手を帰らせたり、実家に帰して離縁したりするという意味があります。
- 和服の襟(えり)を抜く: 着物を着る際に、襟を後方に押し下げる(うなじを見せる)動作のことを「襟をいなす」と表現します。
5. 「いなす」の類語・言い換え表現
「いなす」は少し渋い表現であるため、相手や場面によっては以下の言葉に言い換えると伝わりやすくなります。
| 類語・言い換え | ニュアンス・使い方 |
|---|---|
| かわす(躱す) | 攻撃や質問を身をひるがえして避けること。(例:追及をかわす) |
| 受け流す | 相手の言葉をまともに受け止めず、軽く聞き流すこと。(例:批判を受け流す) |
| あしらう | 相手の言うことを真剣に取り合わず、適当に処理すること。(例:軽くあしらう) |
| はぐらかす | 話題をそらして、核心に触れないようにすること。 |
6. まとめ
今回は「いなす(往なす・去なす)」という言葉について解説しました。
- 意味: 相手からの攻撃や追及を、言葉巧みに簡単にかわすこと。
- 語源: 相撲や柔道で、相手の突進や攻撃を急に体をかわしてそらす技術から来ている。
- ビジネスでの活用: 正面衝突を避け、人間関係を円滑に進めるための「大人の対応」として使われることが多い。
「いなす」力を身につけることは、ストレスの多い現代社会を生き抜くための処世術の一つかもしれませんね。言葉の成り立ちを知って、ぜひ会話の引き出しとして活用してみてください。
参考文献・参照サイト
本記事の制作にあたり、用語の意味や語源について以下の公的辞書・専門サイトの情報を参考にしています。


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